≪彩雲国憑依ネタ≫

憑依や成り代わり系というものなので、
そういったネタが嫌いな方は見ないほうが賢明かと思います。

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・女主人公
・よくある事故死→キャラになる系
・原作知識はなしか少し知っている程度

・憑依対象は劉輝
・劉輝が幼い頃(大体清苑が流罪になる一ヶ月前ぐらい)からの話
・劉輝自身の意識も有り
・体の動かす優先権は主人公より

・兄弟や母親に厳しく辛く当たられることによる精神的負担から劉輝自身が無意識に主人公を引き寄せた
・死ぬことを受け入れているようで受け入れられなかった主人公の不安定な魂が劉輝に引き寄せられた
・劉輝は主人公が劉輝として動いている間のことを見ることができる
・最初の頃は、劉輝は主人公のことを受け入れていなかった


大体こんな感じの設定
劉輝との幼い頃からの精神的な付き合いから、恋愛に発展するかしないかぐらいがちょうどいいかと
主人公は劉輝が秀麗に惹かれるのもしかたないと思っており、秀麗のことを妹みたいに考えていたりとか
劉輝が秀麗に恋をしてからは、いままでほとんど主人公が劉輝の体で行動してたのが少しずつ変わったりとか

いっその事、劉輝は夜だけ体を動かせて主人公は朝から夕方まで動かせたりとか?

主人公を動かしやすくするために、霄太師に助けを求めるのは楽ですが
霄太師には主人公は劉輝が自ら作った人格、ぐらいしか言わない程度に留めておいたほうがいいかな?
あの、狸なら有害かもしれないと言う理由で劉輝から主人公を剥がしかねないので
(原作の今の霄太師なら、少しは考えてくれるかもしれませんが、茶大保を失っていない段階での霄太師は王のことしか考えていない紫仙としての考えを人(?)としての情より優先するきが……)

清苑にはすぐにばれそうです
可愛い弟が明らかにいつもと違う態度や対応に否応なく気がつくかと思うので
彼を騙せるぐらい劉輝をしらない時期に会いそうですし

その点、霄太師は劉輝を王になる器としかみていないので
ある程度不審な動きでも、それが劉輝であるならば少しは泳がせていそうだと思います
劉輝を精神的に守るために、人格が現れたとか主人公の人格がなくなったら劉輝が壊れる可能性があるとか言ったらある程度は泳がせてくれるかと

劉輝が邵可と出会ったのは、清苑が流罪になってからでしたっけ?
そうだったら、邵可にはある程度仲良くなってから人格として主人公紹介ぐらいになるかな
そうじゃなかったら、ある程度説明をしないといけない状況になりそう……

最終的な相手役は、劉輝か静蘭ぐらいが打倒な線かと
書いて見ないことには絡ませやすいキャラは分からないので(笑













あぁ、目線が低い。
いや、そんなことより私は私は死んだはずだ。

どうして私はいま風を感じ周りの景色を見て息をしているのだろう。
分からない。

分からないが、体中が何故か痛いのとこの場所が優しく私を隠しているのが分かる。
だからだろうか私は何も考えず静かに瞳を閉じて夜の闇にとけるように眠ったのだった。




泣き声が聞こえる。
赤ん坊みたいな大きな自分を主張する甘えの泣き声でなく押し殺した泣き声。

ここがどこかは分からない。
さっきの場所とも違う。真っ白な場所。
どこを見渡しても真っ白。

声が聞こえる方向を見るが誰もいない。
誰もいないが声が聞こえる。
もしかしたら、自分が視認できないだけかもしれないので
声の方向に歩いていく。

肩が震えている子犬のような少年を見つけたのはすぐだった。


「どうしたの?」


無意識に声を出す。
少年はピクリと肩を動かしたかと思うと、こちらを静かに見た。
怯えたような瞳はとても大きくて、私を見てくる。


「だれ?」

「質問に質問で答えるな少年」


私が小さく呟いた言葉にピクリと肩を動かす。
あぁ、怯えられているな。なんて考えても、この場所には私と彼しかいないのだから少年以外に声をかけられない。
私は溜息をどうにかして押しとどめ、極力笑顔で少年と目線を合わせるようにしゃがみこんだ。


「どうしたの?」


できるだけ、優しい声色で引きつってるかもしれないけど笑顔で私は聞いた。
少年は驚いたように私を見ると小さく悲鳴をあげた。
なんて失礼な少年だろう。
だが、年上の威厳を保つために笑顔は――たとえ引きつっていても――絶やさない。


「なんで、ここにいるの?」


少年が怯えたように私に問う。


「いつの間にか、ここにいたの。君はどうしてここにいるの?」
「なんで、どうして……
 あなたはここにいるの……」


怯えた瞳で見ていた少年は怯えた声で言い続ける。
私は彼の様子に口を開けなかった。


「だって、ここはりゅうきのせかいなのに!!!」


どこか悲しく

どこか辛く

どこか痛ましい




少年の叫び声が世界を揺らした気がした。










少年の叫び声とともに自分がどこかに引張られる感覚があった。
どこかに行かなければならない。
それがどこかは分からないけど、だ。

そう考えてる訳じゃないのに引張られる感覚が強くそれに抗えなかった。


「劉輝!!」


そういいながら自分を覗き込んでくる少年が居た。
瞳には心配そうな色があり、彼は誰だろう?
それに【りゅうき】は私がさっきあった幼児ではないか?

だが、よく考えるとあの幼子が【りゅうき】かどうか分からない。
叫んだ時の声に名前のような単語だったから幼子を【りゅうき】と仮定しているだけの話である。
私としては幼子が【りゅうき】でなくても構わないのだから、幼子を【りゅうき】と呼んでいても構わないだろう。

私はとりあえず、自分が【りゅうき】と呼ばれるのが不思議で眉を寄せてしまった。
その態度がいけなかったのか、少年が不思議そうにこちらを見ていた。
視線を返す義務もないので私は静かに辺りを見渡した。


「劉輝どうしたんだい?」


視線が低い。
そういえば、少年もこちらに視線を合わせるために屈んでいたではないか。
何か、標準になるものはないかとまた辺りを見渡すが、どこか分からない景色が広がっているだけだった。

首を傾げてみるが、自分の身に纏っているものにも違和感があった。
自分を見てみると、全体的に緩やかな服。
だが、それはシャツやデニムのズボンと言う訳ではなく民族的な服だった。
民族衣装に精通しているわけではないので、その服をみて思ったのは、
韓国ドラマでみた宮廷女官のような格好がひらひら度を増したような格好だと思った。

動きにくい訳ではないが、自分の手を見て驚く。
紅葉のような小さな手。
これでは、まるで、あの【りゅうき】のような幼子ではないか。

小さな手を握り締めたり、開いたりしていると少し動かしずらいことが分かった。
それに、節々と言うか全身が痛い。
不思議に思い、痛かった額の部分を触ってみると思った以上に大きなこぶがあった。
それに、再び手をみると乾いた血がついていた。
痛いはずだ。
しげしげと、その手を見ていると腕を軽く掴まれた。


「傷に直接触ってはいけないよ劉輝。
 手当てをしよう。こちらにおいで」


私を劉輝と呼ぶ少年はよく見てみるととても綺麗な顔立ちだった。
【りゅうき】に少し似ているかもしれない。
ぼんやりと、少年が掴んでいる自分の腕を見る。

直接ではないが、服越しに触られる手は暖かく。
あぁ、これは夢ではないのだなと静かに受け入れる自分が居ることに、
冷静な部分の私は自分で自分に驚いていた。

死んだはずの自分が夢でなく現実であると考えている。
不思議だ。
ここが現実ならば、あの時死んだ私は夢なのだろうか。
生きているなら、それはそれで良いのかもしれない。

小さくなってしまったらしい自分の体を見ても
それはそうであるとしか受け取れない私は、あの時死んでしまった私は何かを死んだ時に置いてきてしまったのかもしれない。

仮定の考えばかりが浮かんでは消えていく中、
私の腕を掴んでいる少年はどこかの部屋に入った。
もちろん、腕を掴まれてされるままに流されていた私もその部屋に入っていった。

椅子に座らされたのだが、少年は部屋の中から箱を持ってきた。
手当てをするといったから救急箱だろうか?
少年の持っている箱に意識を向けた後、少年がまだ何か探しているらしいので
私は部屋の中を見渡したのだった。

部屋の調度品といい、ここは日本ではないらしい。
服を見てもそう感じていたが、ここで確定した。
昔の韓国とか中国とかに似ているのだが
どちらかというと、中国よりなのだろうかと思ったのは目の前にお茶を出されたときだった。


「怪我の手当てをする前に、お茶を飲もうか。劉輝の好きな甘いお茶だよ」


今日だけ特別だよ。
もう一度静かに微笑みながら言った少年。
私は心配されているらしい。
私が心配されていると言うより【りゅうき】が心配されているのだが、
少年には私が【りゅうき】に見えているのだから私が心配されていると考えても仕方がない。

伺うように少年を見ると少年は促すようにこちらを見るだけだった。
私は恐る恐る、お茶を飲んでみた。
お茶を口に含むと、甘いお茶の味が口に広がった。

普段の私ならすぐに口から出してしまいたい味なのだが、
今の私の体はそれを普通に受け入れ、なおかつ、
私はこの味がなかなかおいしいなんて考えてもいた。


「おいしい」


自然に呟き頬が綻ぶのが分かった。
少年はその私の様子にほっとしたように息をついていた。

そのあと、黙って治療を受け入れている私に少年が厳しい瞳を向けているのを私は分かっていて受け流していた。
少年にはその権利があると、なんとなくそう思ったからかもしれない。
それに、私じゃなくて【りゅうき】に対してでも、彼は私に優しくしてくれた人間なのだから。











「劉輝!!」


庭に倒れるように眠っている劉輝がいた。
慌てて近づき覗き込むと劉輝は不思議そうな目で私を見て眉を寄せていた。

いつもなら、私を見たら笑顔で私の名前を呼びこちらに駆け寄ってくる劉輝が、
どこか、はじめてみる人間に驚いたような雰囲気を纏っているのがひどく印象的だった。
いや、それより、ひどく困惑してしまった。


姿形は劉輝なのに、劉輝じゃない。


そんなはずないのに、そんな考えが頭をよぎる。
公子として生きているうちに、色んな人間や、その人間関係を見てきて
常にその人物の裏にある考え、可能性を考えてきたが、いままでで、一番馬鹿げた考えだ。
自分に無条件の信頼を、愛を与えてくれる劉輝に限ってそれはない。


「劉輝どうしたんだい?」


さっきまでこちらを見ていた劉輝があたりを見渡していた。
別に珍しいものなどないだろうに不思議そうな目はそのままだった。
首を傾げて、自分の手を見ているかと思えばその手を本当に驚いたように見ている。
驚きが終わったのか、その手を額に当てると不思議そうにまたその手を見ていた。
その手に血がついているのが本当に不思議なような様子に、
私はその様子をただ見ているだけだったことに驚いて劉輝の腕を掴んだ。

血がにじんでいる額を知っていたはずなのに無防備に触らせてしまったのだ。
近くに居てそれを止めれたはずなのに、それを止めなかった明らかに私の過失だ。


「傷に直接触ってはいけないよ劉輝。
 手当てをしよう。こちらにおいで」


劉輝にそういうと、こんどは私の顔をじっと見てきた。
どこか、いつもの劉輝と違うことに焦りを感じて足早に回廊を歩く。

どうして、私の名前を呼んでくれないのだろう。
どうして、不思議そうな顔で私を見るのだろう。

どうして、笑顔を向けてくれないのだろう。



不思議そうな目でいろんな場所を見ている劉輝は、
いつも私に向けてくれる顔はどこにも出さず静かに座っていた。

治療のために入った室に、いつも使っている治療用の道具が入った箱を取り出す。
それさえも不思議な顔で見る劉輝。
私はひとりで焦っていた。

何に対してといわれれば、それは分からない。
たぶん、劉輝に対してだろう。
いつもと違う劉輝。
劉輝が私から離れていってしまうかもしれない。
それに対する焦りだと思う。

焦っているのも尾首にも出さず、大人達と会話するより複雑に考えを巡らず。
劉輝のいつもの表情を見るためにはどうすればいいのか。
劉輝はこれを好んで飲んでいたので甘露茶をだそうと言う結論に私の考えになった時、
もう少し、まともな考えはないのか馬鹿馬鹿しいと思いながらも甘露茶を淹れるように近くに居た女官に頼んだ。
それを劉輝にだした私はそれこそ、馬鹿だろうと内心自分をこけ落としていた。


「怪我の手当てをする前に、お茶を飲もうか。劉輝の好きな甘いお茶だよ」


今日だけ特別だよ。
なんて、言って微笑んでみるがすぐには手をつけない劉輝。
伺うようにこちらをみた劉輝に私は促すように視線を返すだけだった。
私が怒っているとでも考えているのだろうか劉輝は恐る恐る甘露茶を口につけた。


「おいしい」


劉輝の顔が綻んだのを見て、息をついた。
自分に向けられたものではないが、劉輝のいつもの表情と近い表情を見て安心したのだ。

そのあと、劉輝が甘露茶を飲み終わってから怪我の治療をしたのだが、
黙ったまま治療を受ける劉輝に思わず観察するように劉輝を見てしまった。




どうして、劉輝は何も喋らないのだろう。

どうして、こちらを不思議そうに見るのだろう。

どうして、劉輝は私の名前を呼んでくれないのだろう。



疑問は渦巻くのだが、それの答えはでてこない。
答えの出ない問題に私は静かに、答えを知っている劉輝に声をかけた。


「お前は誰だ」


劉輝は静かに私を見て、困ったように微笑んでいた。
それは、無邪気に笑う幼い子供のそれではなく、諦めと悲しさと寂しさを混ぜたような微笑だった。






 
 

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