国試に受かりました。
順位はまあそこそこだったのですが何故か仲良くなった藍楸瑛と李絳攸のせいで連日宴です。
正直帰りたい。
家の食事が恋しいのだが年下2人が文句も言わず(?)に行っているのに年上が弱音吐けません。
楸瑛はこちらを心配しているのか分からないが帰ったらと聞いてきたりするいい子です。


「なんで、俺ばかりこんな目に……」
「そりゃ、国試をその年であの順位で受かってたら家の娘の婿にしたいと思うのは定石ですよ。
 将来明るくて安定しているのは確実な若人に娘を嫁がせたいと言う気持ちと
 将来明るく高官になるのは確実な若人に恩を売っておこうという気持ちでしょ」
「そんなものに俺を利用するな!!」


憔悴しきっている絳攸に自分なりの解釈を言うとちょっと元気が出たらしく怒鳴ってきた。
それにしてもこの年で短気である。
将来は毎日怒鳴る切れやすい大人になっているのだろうかこの少年は。
ちょっと将来が楽しみなような、面倒なような……。
老人になってからもそうだったらかなり面倒な老人だろうな。


「それに、若いという点なら楸瑛とお前もそうだろ」
「私は来るもの拒まず去る者追わずだからね」


格好付けて言う楸瑛。若干流し目。
子供が背伸びしているみたいで可愛いなんて本人には言わない。
あんまり年齢は離れてないはずなのにな楸瑛とは。
養い子と年が近いからだろうか楸瑛は子供っぽくみえる。
花街でも人気らしいけど年上のお姉さん方はそれが良いんだろうね。


「将来女に背中刺されて死ぬ人間ですね」
「ああ、そうだな。さっさと刺されてしまえ万年常春男」
「……君達酷くないかい」
「私のは男の僻みと言うやつですよ楸瑛」


落ち込んだのか若干俯き気味だ。
君の発言が発端ですよ。君が蒔いた種ですよ楸瑛。いわゆる墓穴で事業自得ですよ。
なんて思ったが追い討ちをかけるつもりはないので言わない。

それにしても絳攸に対する連日宴の時の娘紹介は凄まじいものがある。
絳攸が個室に逃げ込んだらその室に女の人が入って行くとすぐに絳攸の悲鳴が聞こえる。
あまりにも可哀相なのでと楸瑛が助け出すか自力で抜け出す絳攸。


「女なんて女なんて……!!」


そう呟いている彼にかける言葉はない。何を言っても無駄に終わるのは確実だ。
運命の人はいるとか、一部の女の子だけだから気を持てともいえない。
開き直れといって楸瑛みたいに来るもの拒まず喰っていく絳攸なんて見たくないしね。

私が女で絳攸と会う機会があるならあれくらいしてものにしたいぐらい絳攸は好物件である。
紅家の養子だから紅家とも繋がりが持てるし、人物としても楸瑛みたいに女の噂を聞かない。
それにこの年で国試を受かるのみならず一位で及第、顔も標準以上。文句なしである。


「そういえば、はどうやって見合いというか女の子達を親元に帰しているんだい?」
「少しお話したら皆さん返ってくれますよ。良い子ばっかりですね」
「嫌だと行っても追いかけてくるし、
 まだ嫁はいらないといっても追いかけてくるんだがお前と俺にどれだけの違いがあるんだ!!」
「及第順位、年齢、家族構成、あとは性格と容姿?」
「決め手は家族構成なんじゃないかな絳攸」
「妻はいないが子供は沢山いますからね私」


なんだか色男みたいな発言ですが事実は事実。
養子だって子供は子供であるあまり知られてませんがね。
女を武器に来る人にはこの話で大概冷めてくれますし。
そうでない方も将来を考えて自分から親にこの人嫌っていってくれますし。
たまにそれでもいいからなんて言う人もいるから心苦しいんですよね。


「私の及第順位は16位ですし、年は20歳、性格はまあ普通で容姿は平凡。
 それに比べて絳攸は状元で及第、年は16歳と及第者の中では最年少ですが結婚適齢期でもありますし、
 容姿は並以上どころかかなり良い部類に入るし、紅家とも縁が組める好物件。
 私が野心家だったら絶対に娘を嫁に行かせようとしますよ」


ずささ、と距離をとられた。
絳攸は反応が素直だから面白いんですよね。
息子以外にも娘もいるって話したことありますし。


「絳攸は失礼な子ですね。
 今私の家にいる娘は全員10歳以下ですよ。そんな幼子を嫁がせるわけないでしょ」
「里親に出した子の方を警戒してるんじゃないのかな?」
「そりゃ、絳攸と同い年ぐらいの子もいますが私は子供の意見も聞かずに縁組なんてしませんよ。
 できるなら好きな相手と夫婦になって欲しいですしね。それに、今の状態の絳攸に嫁がせたくありません」


私が言い切ると複雑そうな表情の絳攸。
くくくっと苦笑している楸瑛。


「もちろん、楸瑛は論外です」
「何故か聞いても?」
「藍家に嫁げるほどうちの格式は高くないもので」
「現実的だね」
「分を弁えているとおっしゃいなさい」
「絳攸は良いの?紅家の養子なのに」
「絳攸の場合は絳攸が自分の養父を説得さえすれば万事大丈夫です。
 それに、百合様の説得さえできればゴリ押せば養父殿の方も大丈夫でしょうし」


楸瑛はそりゃそうかといった風情での言葉を受ける。
でうちの娘たちが楸瑛を
『一見良い男なのに実はヘタレ』言っていたのを聞いていただけに楸瑛だけはないと思っていた。
そこがいいんじゃない、とか言っている娘もいたが気のせいにしておこう。
だが、一様に絳攸様はちょっと短気な所があるが大体照れ隠しだから可愛らしいなんていっていたのも知っている。
10歳以下の娘も里親にだした娘の言葉に頷いていた。
女の子は男の子より精神的に早熟だと内心で舌を巻いていたのは記憶に新しい。
もしかしたら、娘は絳攸を狙っているかもしれない。頑張れ絳攸。私は知らない。


「それにしても連日の宴はいただけませんね。お酒はほどほどにと子供たちに怒られました」
「向こうは一応祝いの気持ちで宴を開いているぶん断りずらいし」
「いっそのこと肝臓が弱って倒れたことにしようかと考えているんですが」
は酒が弱いんだったな」
「普段飲みませんからね」


後日、私が行った宴に肝臓が弱って倒れたと言う絳攸の家の人間がいて思わず笑った。




 

 

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