私は今御史台長官に呼ばれている。
一歩一歩長官室に近づいているのだが確実に歩みは遅くなっているだろう。

ああ、彩八仙よ!!
信仰してないが八仙の皆さん!!
私が貴方たちを信じてないからこんなことが起こったなら明日からは多少信じますからお願いです。
いろいろちょろちょろと悪い事していたのは謝ります。
でも、私利私欲でやったわけではないんですよ。
言い訳になりますが民のためという大義名分でムカツク奴らをそれとなく突っついていただけです。
あいつらいなくなってからはちゃんと普通の州官やってだじゃないですか!!

長官室の前に来る頃にはの想像は裁判場で自分が退官させられる所まできていた。
長官室の前に立っている武官が中々入室しない
怪訝な目でみているのだがいつものなら気がつくそれにも気がついていない。
はゆっくりと覚悟するように入室した。
そして、葵長官が口を開く前に勢いよく部屋で土下座した。



「すみませんすみませんすみません。
 私が白州の官吏なのに黒州にまで手を伸ばしていたのがばれましたか?
 それとも紫州でアレだった官吏のアレな証拠を被害者家族に送ったのがダメでした?
 あの適度に友人付き合いのあった人が御史だったなんて知らなかったんですぅぅぅうううう!!!!」

「……そんなこともやっていたのか」



やぶ蛇だったかぁぁぁぁぁああああ!!!
それ以上にやばいことやってたっけ?
というか、国の汚物(ヒドイ)を排除したんだから褒められることは
あっても御史台に引張られることなんてないですよね!!ですよね!!
アレ?もしかして越権行為とかで退官させられるとか?
ありえる。物凄くありえる。

内心の混乱を若干表情にも出しつつが皇毅を見ていると皇毅は険しい顔で溜息をついた。
最終通告がくるのかと身構えるだったが後日それが皇毅にとっての普通の表情と呆れた溜息だったと気がつくと
その時の皇毅より深い溜息をついたのだがここでは関係ないので割愛する。



「今日ここに呼んだのは他でもない」

「はい、退官ですね分かりました。
 私はこれから沢山の子供達を食べさせるために友人にお金借りに行くので止めないで下さい」

「………何を言ってるんだ?」



室をでようとすると物凄く低い声で言われ思わず立ち止まり振り向くと再び溜息をついている皇毅。



「葵長官は知らないかもしれませんけど私には子供が沢山いましてね。
 妻はいませんよ。全員養子です。拾い子です。
 今は子供は4人と兄が数人いるんですけど、昔はもっといましてね
 引き取ってくれた方々のところからたまに里帰りしてくるんですよ。
 もう子供を産んだ子までいるんですけどその子も連れて来てくれるんです。それが可愛いのなんのって!!
 初めてじーじなんて言われた時はちょっと、いや、かなり意識飛びそうでしたよ。
 もちろん、この年でお爺さんなのかという気持ちと本当に孫可愛い!!という気持ちがごっちゃになってたんですけどね」

「子供のことは知っている。だが、そんなことは聞いていない」



子供のこと知ってるって誰か家のお金のなさを葵長官に面白おかしく話したのだろうか?
首を傾げるがどうやら葵長官が話を促しているのが分かり口を開いた。



「お金借りるところですか?
 金持ちの友人から回るつもりなんでまずは楸瑛からでしょうか?
 で、次は絳攸のところに行ってたぶんその2人でしばらくは大丈夫でしょうからその間に新しい職を見つけますよ
 国試受かって官吏やってたという肩書きがありますからそこそこのところで働かせていただけるでしょうし」

「そんなことも聞いていない」

「じゃあ、何の話なんですか」



分けが分からずにそう聞くと深い深い溜息を吐かれた。
幸せ逃げまくりですね葵長官!!
はじめて顔見ましたけど最初から幸せそうだと思ってませんでしたけどね葵長官!!



「白州からお前を引き抜いたのは失敗だったか……」

「は?引き抜き?」

「上官から連絡が入っていると思うんだが?」



聞いていないのか?と、言外に聞いてくる皇毅。



「聞いてないんですけど……」

「……上官が次の配属先が御史台だから公にしないようにしたのか、
 ただ単にからかわれていたのかは知らないがお前は今日から御史台に配属になった」

「はぁ……。
 と、言うことは私は退官じゃないから友人にお金を借りに行かなくてもいいし
 新しい職を探すために町をうろつかなくても良いし、
 子供たちに失業したと言わなくても良いし、休日に畑仕事も行っても良いんですね!」



こいつ本当に大丈夫なのか?
そんな風に思っても今更白州に送り返すのもなんだ。
それに、中々興味深い調査の結果が出ているのも事実。
多少性格がアレな所は混乱しているからだろう。そうであって欲しい。

皇毅がそんな事を考えているのも知らずは喜んでいた。
最悪の事態だと思っていた御史台の長官に会うことがただの職場がかわるだけだったのだ!!
貴族の登竜門とか言われて国試組はほとんど行かないような部署だが失業より万倍ましである。



「お前の今までの不正摘発は越権行為といえる」

「そうですよね……
 越権行為ですよね……。退官、ですよね……」

「私は自分で引き抜いた人物をその日に退官させるほど馬鹿ではない」

「葵長官………!!
 長官が捨てられたら私必ず拾いますから子供か兄弟になってください!!」



なりの最大限の感激を表したのだが皇毅は不機嫌そうな顔をもっと不機嫌に歪めた。



「本当に引き抜いたのは失敗だった」

「断定系になりましたね長官」



気にしませんがね。
さっきみたいな事を言うと大抵の人は複雑そうな顔しますし。
こういった冗談通じなさそうですし長官。
の発言を無視する形で皇毅は口を開いた。



「明日からお前は御史台の人間だ。
 明日またここに来いその時に仕事を与える」

「御意に」





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