よっす、最近コードギアスの世界にトリップ(?)をしたらしい普通の高校生だ。
主人公の友達のポジションだったリヴァルっていう、
これまた俺と同じぐらいに地味な高校生に憑依した俺は面白おかしく日々を過ごしていて、
これまたいつの間にかこちらの俺の世界に帰っていた。

帰ってきてから、2日後の金曜日。
利之にその話をすると「お前……、実はオタクで小説書きだったんだな」とか言われたがお前にだけはいわれたくない。
利之こそ、オタクだろう。そういうと、「そうですが、それがなにか?」と返された。
負けた気がする。なんか知らないケド負けた気がする。

利之にコードギアスを録画したDVDを借りてその日は帰ったわけだ。
帰り際に「パソコンにおススメのSSのURL送ってやるからな」なんて不敵な笑みで言われた。
家に帰ってコードギアスを見ていた俺は無性にバニラのアイスが食べたくなってコンビニに行ったわけだな。


さ〜〜〜て、記念すべき2回目の憑依はこのバニラアイスのせいではじまるわけ。






















「ルルーシュってすごい生活してんなぁ。
 てか、ゼロってお前だったの?すごっルルすごっ!!
 学園恋愛系だと思ってた俺って一体。………俺って……一体……」



リヴァルとして過ごしていた約1年間を思い起こして軽く落ち込む。
テレビからはルルーシュやスザクの声が聞こえてきてすぐに意識をテレビに移した。



「あの時話した彼女がC.C.てんだ。へぇ〜〜。
 それにしても、俺って昔こんな事言ってた?
 まあ、これはリヴァルで、俺は俺だから違うっちゃぁ違うけどさ。たぶん」



利之に借りたコードギアスを見ながら独り言を呟く。
1人暮らしは独り言が多くなるのだ。けして、寂しいからではない。

金曜の夜から土曜日をほぼ使い込んで俺はコードギアスを見ていた。
途中休憩を入れつつ見ていると、自分の思い出をビデオで見ているような気持ちになる。
でもね、リアルだった彼らが2次元になってるのは不思議な感じ?

疲れたから、休憩をいれるためにストップをする。
家にはDVDプレーヤーなんてないからPS2を使っている。
しかも、これさえ利之からの借り物なのさ。いいのさ、無期限で貸してくれるって言われたから。
理由が「お前がこっちの世界に足を突っ込んだ記念」らしい。
それに、あいつの場合兄貴のPS2があるからゲーム自体はできるから問題ないらしい。
あいつの兄貴は自宅にゲーム類を置いていってるらしいよ。
ブルジョワめが。

冷蔵庫をあけると、俺が腹を下す原因になった牛乳があった。
そういえば、まだ捨ててなかったね。
これがなかったらリヴァルになってなかったと思うと、自分で残しておいた腐った牛乳でも理不尽なものを感じる。
捨てるか……。
台所に牛乳を捨てた俺は改めて冷蔵庫の中身を見るが飲料水以外は卵と少しのハムしかなかった。

買い物をしてなかったのだ。
それにしても、アイス食べたい。バニラのアイスが食べたい。


一度考え出すとバニラアイスが無性に無性に無性に食べたくなってきた俺は近くのコンビニに行くべく、
寝巻きのズボンからまだまともなズボンに履き替えて小銭をポケットに入れて家を出た。

歩いて5分のコンビニに入ると時間がお昼時に近いからか人が多い。
とりあえず、アイスとおにぎりとジャンプだけを買いそうそうにコンビニをでる。
コンビニに長く居る理由はない。ジャンプも早く読みたいしギアスの続きも見たい。

内心ルンルン気分でコンビニ袋も軽く振りながらの帰り道。
コンビニ袋を振っていたのがいけないのか、コンビニ袋をひったくられました。
一瞬呆然としてしまった俺。
仕方ないだろう、普通財布を掏られても、コンビニで買ったものをひったくられると思わないし。

俺はまだひったくり犯が自分の延長線上にいるので迷わず追いかけた。
そこそこ足が速い俺は徐々にひったくりとの距離をつめていった。
ひったくりは焦ったのか、曲がり角という曲がり角はすべて曲がり始めた。

内心、このままだと俺迷子だ。
考えながらも俺はひったくりを追いかける。

俺のアイス俺のジャンプ俺のおにぎり!!!
高校生の1人暮らしに余裕なんてないんだよっ!!!
ジャンプは俺の贅沢品なんだよっ!!!
アイスだって、おにぎりだって、コンビニじゃなくてスーパーに言ったらもっと安く売ってることを考えたら超贅沢品なんだよっ!!!
どんな気持ちで俺がそれを買ってると思ってんだっ!!!

俺の今日の糧を返してもらわないとしばらくは卵とハムしか食べれなくなる。
安いからって買いだめするんじゃなかった………。

ひったくりが曲がり角をまたまがったので俺も曲がる。
すると、目の前に人がいた。ひったくり犯ではないのは服が違うから分かる。
俺は思いっきりぶつかってしまい、尻餅をついた。



「しゅいましぇんっ」



俺がぶつかった相手に対して言う。
急なことなので舌が回らなかったが、謝らないよりましだろう。
お尻があまりにも痛くて相手を見ていなかったのだが相手は少し呆れたような溜息をついていた。
ちょっ、そりゃぁ俺が悪いけどな。溜息つかなくてもいいじゃないっすか。
急にぶつかったのにも関わらず相手は溜息をつくだけで痛そうなそぶりは感じない。
溜息が少し愛情と言うか何か呆れ以外の感情が混じってる気がするのは俺の気のせいなのかしら?

手を差し出されたのでその手を掴んで立ち上がろうとすると目に入るのは自分の物と思えないほど小さな白い手。
紅葉のような小さな手を静々と眺めていると、目の前の相手が眺めている手を掴んで立たせてくれた。



「ありがとうござい……ま…す」



お礼を言いながら相手の顔を見てみると脳に電撃のような衝撃が走った。
なんなんだ、この人物。思わず口をぽかんと開けて相手の普通じゃない部分を凝視してしまった。



「どうした」



怪訝な顔でこちらを見て男は言った。
どうしたもこうしたもない。

男の瞳は真っ白だった。

瞳孔がない。
虹彩がない。
だから、黒目と呼ばれる瞳の部分がない。
白目と呼ばれる強膜しかない。
そういえば、日本人は遺伝的に目は黒や黒茶が多いから黒目って言うけど外国じゃあどう言うんだろうな。何て考える。
相手の男はこちらを凝視しているし視線が合っている(ような気がする。目が真っ白だから分かりにくい)。

もしかして、この人は病気なのか?
もしかして、俺物凄く失礼じゃないか?
もしかしなくても、物凄く失礼だよな?

全身からさっと血の気が引いていった。
俺なにやってんだっ!!
この人は目の病気で視力は(どの程度かは分からないが)ある(のかも分からないが)けど黒目が白目なだけで普通の男の人じゃないかっ!!
普通と違う部分というのはその人にとってはトラウマの可能性が高い。なのに俺はその部分を凝視してしまった。
なんて失礼な奴なんだ俺。自分の無神経さに逆に尊敬の念を送ってしまう。
唯一救いなのは目の前の男は怪訝そうにこちらは見ているが、不快そうにはしていないところだけだろうか。
内心では安堵の溜息をつくが、そこで気がついた。

俺、物凄く見上げてその男のこと見てないか?
そういえば、手が紅葉みたいで可愛くなってなかったか?

そこまで考えて俺はようやく目の前の男と自分の手以外を視界に入れた。
周りを見渡すとそこは俺がひったくりを追いかけていたアスファルトの道ではなく、木造家屋の中らしい。
誰かの部屋にしては何もないような若干広いその部屋は、
中学生の頃、担任のパシリにされて行った剣道部が稽古に使っていた場所に似ていた。
道場というところに生まれてこの方縁のなかった俺としては、その慣れない空間に肩身が狭かった思いしかしなかったのを覚えている。



「いえ、だいじょーぶです」

「そうか……。それでは話に戻るが」



舌が上手く回らない。
まだ、少し心配そうにこちらを伺い見ているのが分かるが内心は大混乱状態だが表情にはださない。
リヴァルだったころに培われたある程度の誤魔化しかたの1つだ。
ついでに、これは自分を誤魔化すことにも使える。
今も自分を騙し騙し現状を理解しようとしています。はい。



「一ヵ月後にヒナタお前の誕生日が来る。夜に宴を開くからそのつもりでいるように」



そういってから、部屋に戻るように言われた。
言葉に甘えて素早く廊下にでてこのヒナタという子の記憶を辿って自分の部屋に向かう。

部屋に入ってとりあえず溜息1つ。
情報を整理しようか、オッケーオッケー。
その前に一言言わせていただこうか。



「なんで、ようじょなんだよーーーーー!!」



鏡見たくねぇー!!
さっきの男の人記憶ちがいじゃない限りヒナタの父親だしー!!
目が白いのたぶん病気じゃないだろうしー!!
俺も今では目が真っ白だろうしー!!

ジャンプっ子の俺はこの体の主であるヒナタの記憶とこの体の主の名前で分かったことがある。
そう、この世界はこの体の主は


ジャンプで現在も大人気連載中『NARUTO』の登場人物で
白眼という特殊な目を持った一族の直系家族の長女で内向的な性格で主人公の事を好きな子だよね。この子。


中学の頃からは普通に読んでいたジャンプの人気連載作品の事ぐらいは知ってるよ。
とりあえず、股間をパンパンと叩いてみた。




なかった。




俺のがなかった。




俺のマグナムがなかった。





マグナァァァアァァァアアアアアアアムっ!!!!!







分かってたさ、分かってた、うん。
幼女=女の子
女の子って事は男の子にあるものはないんだよね。逆も然りなんだけどさ。


知識として持っていても実際分かるとショックじゃんか……。


リヴァルの時はあいつも男だったからまだましだったんだな。
年齢的にも近かったし、男だったし、性格俺に近かったし、男だったし、普通なやつだったし、男だったし。

つい数分前の自分でさえも、とっても羨ましい。
コンビニなんて行かなくてよかったじゃん。
バニラアイスなんて食べなくて良かったじゃない。

男として生きていけたらよかったじゃないか。

普通に生きていけたらよかったじゃないか。
まあ、1年ぐらいでも他人にそれも異世界に言ったことのある人間は普通じゃないだろうけどさ。

これ、今はいいけどお風呂とかトイレとかどうするよ。
それに、今はいいけどさ。将来的にさ。どうするよ。

リヴァルの時も約1年で俺に戻れたし大丈夫だよね。うん。
永住じゃないよね?
とりあえず、これからヒナタでいる時は不純異性交友は絶対しない。
リヴァルの時も何もなかったけど誰とも付き合わないし、結婚もしない。
ヒナタって日向の当主の娘だし、血を残すために誰かと結婚させられるかもしれないけど


男と結婚とかダメ絶対!


体としては普通でも精神としてダメ。
考えただけで鳥肌が立つ。
俺は普通の男子高校生だし、まだ女の子と付き合ったことないんだ。
奥手とか言うなよ。自分で分かってる。

男と結婚させられないようにするにはどうすればいい。

その考えを母親がお昼に呼んでくるまで俺はずっと考えていた。
お昼前に手を洗うとやっぱり自分の目も真っ白で、でも、よーく見たら虹彩と瞳孔があった。
これってこの世界に来て初めて知ったことだ。うん。

日向一族の虹彩と動向は白くて見えにくいだけでないわけではない。


 




 

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