最近、不思議現象にも慣れを通り越して日常になり始めた俺(20歳になりました)だ。 皆さんは知っていると思うが、初体験(他人に憑依的な意味で)は高校3年生の春だった。 最初の頃は混乱しすぎで逆に落ち着いてたり、女の子になったことによる大混乱だったりがあった。 今では、誰かに憑依してもまたこれか程度だし、女の子になっても子持ちになっていても(最後の足掻きのような混乱はまだあるが)混乱はあまりない。 漫画やアニメの世界に行っていて(何故か普通のドラマや映画はない。ドラマや映画の世界だったとしても原作が小説たったり漫画だったりする) 正直言えば俺じゃなくて利之(中学からの友人、オタク属性)が行けば良かったんだ。 さて、これは俺が大学入学前の春休みぐらいの話。 確か大学入学前に髪を茶髪にして高校の友達と遊びに行った日の帰りに新しく買い換えるパソコンの下見に行った時だった。 「またかよ」 正直、飽き飽きしている。 普通に生活していても、ふっとした拍子に異世界に行った挙句その世界の誰かになっているなんて……!! これ、なんてドッキリ?とか、思っていた時期が懐かしい。 初めてこの状態になってから約2年だったかな?異世界での生活は俺の実年齢の倍以上だなんてやるせない。 飛ばされる世界も世界で少年漫画ならちょっとした命の危険〜死亡確定人間になったり。 少女漫画なら命の危険はないが性別が女になっていて恋愛する気がないのに、何の因果か男にモテまくったり。 健全的な漫画やアニメ・ゲームだったらまだましだ! モテまくっても男から押し倒されることはない。 肉体的には女だが精神的には男な俺が男に押し倒される。これは恐怖でしかない。 今思い出しても鳥肌が立つ。 もう、慣れたけどな。いろいろと………(遠い目) 事故でパンツを見られるぐらいなら減るもんじゃないから構わないのだが貞操の危機は軽いトラウマになった。(未遂だったよ、うん) ある世界で男の時に親友だと思ってた男友達に押し倒された時はそれなりの制裁を加えた。 モーホーの世界に俺を巻き込むな。例えその世界の人物だとしても。 そんな黒歴史な俺の過去より、今の俺の状況を確認なければ。 とりあえず、自分(憑依体にて物語の登場人物)の記憶を探るために部屋を見渡す。 記憶は徐々に思い出したり、必要な時に思い出すので適当に行動してたら良いのだが保険のために。 不審に思われないための行動規制(勝手に体が動くから変な気分になる)もあるけど、ね。 2人部屋なのかベットは自分が使っているものともう1つ。 同じ部屋の人物は男で年配の庭師。俺はこの家の使用人で庭師の男は俺の保護者のような人間。 部屋に置いてある変な機械のような物は俺の物で、こういった機械類が俺は凄く好き。 部屋を見渡してこれぐらいの記憶が自分に馴染んできた。 自分以外の記憶とは映画を見ているような、不思議なものだ。 慣れたといっても他人の記憶を勝手に覗くのは趣味が良い事ではないが、自分が周りに不審に思われないためだ。 下手な世界に行くと俺が自分じゃないだけで殺されるような場所もあるのだ。 殺されるぐらいならば記憶を覗くぐらいは許容範囲内だ。 行動規制だって万能じゃないんだから。(実際、偽者だと思われて殺されかけたこともある) 今日は休みらしい。 まとまった休みの時はちょっと遠出するらしく部屋の隅にあったリュックは保存食やサバイバルナイフが入っていた。 機械類が好きな割りにアウトドアな人間なわけね。 部屋から出ようとすると自然と部屋に立てかけてあった剣が見え手に取ってみた。 部屋の感じから西洋系の剣かと思いきや日本刀のような拵えだ。 ファンタジー物には良くある、なんちゃって侍なのだろうか自分は……。 肌ピチピチなのに一人称が某とかわしだったら泣くぞ俺。 …………いや、俺様とか朕じゃなければいいか。うん。 とりあえず休みなら部屋で燻ってるのも勿体無いし家の外に出るか。 部屋を一歩外に出ると長い廊下が。 ここは家というより邸でした。はい。 廊下を歩いているとすれ違う人間にたまに話しかけられる。 適当に相手をしていると、自分がここの邸の使用人で邸の主人である人間の息子さんの世話係りに最近抜擢されたらしい。 その息子さんというのが誘拐されたショックからか記憶喪失でまるで赤ん坊のような状態らしい。 息子さんの名前はルークというらしい。 あははははーーーーー!! こんどはゲームらしいよ。 ここまでで、なんとなく状況を分かってくれた方もいるだろう。 俺の偽名はガイ・セシル。 俺の本名はガイラルディア・ガラン・ガルディオス。イニシャル3Gだ。 ホドという場所の領主をしていたガルディオス家の嫡男で、 両親達を殺したファブレ公爵に復讐しようとファブレ邸に使用人として潜入した。 よく分からないが女性恐怖症な14歳。 多感な時期だろうに可哀相な少年だ。男として同情しておこう。 俺が昔途中でプレイを止めたテイルズシリーズの1つ。 アビスの登場キャラだ。 こいつ、ゲーム終盤とかで死なないよな? 俺ヴァンって言う奴がルーク裏切った当たりまでしかやったことないんだけど。 あと、部屋にあった機械は音機械といって音素と書いてフォニムと読むで動くものらしい。 邸から出るために玄関に向かっていると後ろから走る音が聞こえる。 振り向いてみると物凄い勢いでこちらに向かってくるメイドさん。 「ガイ!!ルーク様がぐずってるの来てくれない?」 「ちょっ!!ちっ近づいてくるなっ!!」 ずさぁっと後ずさる俺ことガイ。 「今日休みだって分かってるけどお願いっ!!」 「わっ分かったから近づいてくるなぁぁぁぁ〜〜〜!!!」 半分泣いているような声で答えると距離をとってありがとうと言われた。 このメイド絶対に確信犯である。 溜息をついてルークの部屋に向かう。部屋に近づけば近づくほど泣き声が大きく聞こえてくる。 思わず途中から走り出す。子供が泣いているのにのんびりするほど冷たい人間じゃないから俺。 子供育てたことあるから俺。女としても男としても。 「ルーク様入りますよ」 ノックをするが返事はいつもの通りなく無断で入る。 だって、現在赤ん坊化している人間で只今絶賛泣いている子供に返事なんて高等技術期待してないし もし、返事なんてしたら速攻で街に繰り出してやる。 部屋に入るとベットの上で泣いている体は10歳中身は0歳児の逆コナンのような状態のルーク坊ちゃん。 俺が入ったことによって泣いているのを中断してこちらをきょとんと見てくる。 とりえず笑ってみる。 途端に泣きそうな顔になってこちらに手を伸ばしてくる。 「がーがー」 「はいはい、ルーク坊ちゃん」 慣れた手つきでルークを抱きかかえる。 てっ、重い!! 10歳児は重いよ。俺14歳だよ。 一定のリズムで背中を叩いてやるとすぐに眠りだした。 ベットに下ろしてやると可愛い顔で眠っている。 やはり、可愛いは正義である。 いつ俺が帰るか分からないがそれまでは俺が父親で母親になってやるさ。
胸に燻るファブレ家への復讐心に首を傾げながら俺は決意した。 |